買い手がM&A正式契約前に従業員面接を行うのはリスクが高い!

買い手がM&A正式契約前に従業員面接を行うのはリスクが高い!

「事業部売却!! M&Aによる企業再生の道」自動車整備業・中古車販売業のケース(第2回/全3回)


メインの事業部門を売却しこれから伸びる事業部門の経営資源にあてた事例:自動車整備業・中古車販売業のケース(第2回/全3回)
自動車整備業・中古車販売業のM&Aのブログ記事

売り手社長は、自社事業のうちコア事業の自動車整備業・中古車販売業の売却を決意します。弊社はさっそく譲受希望会社を選定し、お引き合わせをすることにしました。

譲受先のご紹介

弊社に登録されている譲受希望会社のうち、3〜4社と引き合わせましたが、B社が特に強く譲受を希望します。B社は金融業の会社で、傘下に複数の会社を持っていますが、その中に中古車販売会社C社があります。B社長は車に非常に詳しく、以前からコンプリートカーの販売をしたいと思っていました。B社長は、A社とは違う車種をコンプリートカーにチューンナップして販売することを希望しています。それには、特殊な整備が出来る整備士が揃った会社を探していたのです。

最初のトップ面談では、A社長とB社長、B社傘下の中古車販売会社C社の担当部長が同席し、M&Aを進めていく方向で、ほぼ話がまとまりました。2回目のトップ面談では、買い手B社長の奥様も経理を担当しているとのことで面談に同席し、基本合意の条件交渉へと順調に進みました。

基本合意前の従業員面接

ところがトップ面談でM&Aを進めていくことには両社が同意したものの、基本合意の条件交渉で、買い手B社から思いがけない条件が出てきます。それは、基本合意前に従業員とどうしても面接したいというものでした。

M&Aにおいて、正式契約締結前に買い手と従業員を引き合わせるのは、非常にリスクが高く、本来は避けるべきことです。なぜなら売り手にとっては、買い手が事業・会社を譲受出来る確約が取れていない状況で、従業員に会社の譲渡を進めていることを知られてしまうリスクもありますし、従業員の流出にもつながる可能性があるので、計り知れない大きなリスクになるのです。

買い手B社に売り手のリスクを伝えても、B社は従業員面接をしたいと一向に譲りません。B社には従業員面接を強くこだわる理由がありました。B社傘下の中古車販売会社C社でコンプリートカーを新たに取り扱うにあたり、コンプリートカーにチューンナップするのに重要な、エンジン出力に関する特殊な技術をA社は持っています。C社従業員はコンプリートカーの内装や塗装程度はできるものの、整備についての人材がいないので、A社を買収する目的は、A社の従業員を獲得することが最大の目的でしたので、どうしても面接は必要だ、ということでした。

そこで、弊社から従業員面接について2つの提案をしました。
1)契約前でも、デューディリジェンス終了後で諸条件の確認を行った後に面接を実施する。
2)B社への譲渡を前提とした面接ではなく、技術提携をする、という名目で面接する。

少しでも売り手のリスクを回避するための提案でしたが、売り手A社長は、リスクのある条件にもかかわらずB社への譲渡を進めるべく、契約前での従業員面接に協力してくれました。その理由は、大きく4つあります。

1)トップ面談を通じて売り手社長と買い手社長が強固な信頼関係を築いていった

買い手B社は売り手A社に比べB社単体でも規模がとても大きいにも関わらず、A社長へ細やかな気遣いをしていました。また、B社長はA社の従業員を獲得したいという思いを最初のトップ面談からしっかりと伝えていました。

2)買い手の組織的マネジメント体制

売り手A社の中古車販売・整備事業は利益率が高い事業です。しかし、将来的に更に売上を伸ばそうとする場合、A社長というオーナー個人の経営から組織的マネジメント体制を導入する必要があるとA社長は考えていました。組織的なマネジメントのノウハウがある会社で、かつ営業面でもA社が得意な車種と違う車種を展開しているB社と組むことで飛躍的に売上が伸びると考えたのです。

3)買い手社長のコンプリートカーへの熱意

A社にご紹介した複数の譲受希望会社の中でも、B社長のコンプリートカーへの情熱は群を抜いていました。B社長は非常な車好きで、A社長が車の専門的な話題をすると、B社長自ら質問をするほどだったのです。

4)売り手従業員のスキルの高さ

A社長は、自社従業員のチューンナップ技術の高さには自信を持っていました。その技術力は業界内でも知名度が高いほどで、人柄も真面目でしっかりとした人物がそろっています。自社の従業員達と面接を実施すれば、B社長はますますA社中古車販売・整備事業を欲しいと思うだろうという考えがあったのです。

従業員面接は買い手B社の社屋で行われました。打合せ通り、技術提携をするという名目で、B社側から技術をメインに質問していく形で実施され、無事に終わりました。売り手A社長は、実際いよいよ従業員面接、という段階で非常にナーバスになり、面接直前の両社の関係は必ずしも良いとは言えない状況になりましたが、買い手B社側の従業員面接の準備がしっかりしており、特に問題は起きませんでした。そして、A社長の予想通り、B社長はA社従業員達をすっかり気に入り、M&Aは順調に進むかに見えました。

今回のM&Aでは、買い手からの強い要望により、正式契約前に売り手の従業員との面接を実現させていますが、確実に譲受が行われるという確証がない前に面接を行うことは、売り手にとって非常にリスクが高くなってしまいます。本来、従業員面接は正式契約後に行うべきもので、今回のようなタイミングでの従業員面接は、売り手と買い手の強固な信頼関係なしには実現しないと言えます。
(第2回/全3回)



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