会社売却の相場や価格の決め方とは?・その1コストアプローチ
M&Aにおける会社売却の相場や価格の決め方としての企業評価方法のひとつであるコストアプローチは、企業の資産価値からアプローチする方法です。企業が保有している資産の再構築を仮定して現在の資産をベースに算出し、「数値の客観性」を持ち合わせているのが特徴です。コストアプローチは、簿価純資産法と時価純資産法に分類することができます。
簿価純資産法
帳簿資産合計を企業価値として評価する簿価純資産法は、対象企業の現状バランスシートに計上されている純資産額に基づいて、株式価値(自己資本)を発行済株式数で割り、1株あたりの株価を算出します。
資産の時価鑑定などを必要とせず様々なコスト発生がないことと、明解な方法であることが最大のメリットと言えます。
株式売買や新株発行が頻繁ではない零細企業の経営者にとっては、非常にイメージを持ちやすく納得・理解しやすい方法として選好・多用されます。また、社歴が短くキャッシュ見積りが難しい非上場企業や、保有資産の時価が低い・保有資産がほとんどない企業での採用にも適しています。
ただし、銀行や金融機関からの借入などで資産・負債に減価償却の不足分がある場合は、修正を加えてからの算出が必要です。
有価証券や土地などで大きな含み利益が認められる場合には、その項目のみに時価評価を取り込む必要が発生し、「修正簿価純資産法」として別分類されます。
時価純資産法
時価純資産法では、資産の時価換算をしたバランスシートを元に算出します。買掛金や支払手形などの営業債務(負債)を、時価資産合計(資産合計)から差し引いたものを企業価値(純資産)と考えます。さらに、銀行や金融機関などからの借入金などの有利子債務を、企業価値(純資産)から差し引いたものを株式価値として、発行済株式総数で割り1株あたりの株価を算出する方法です。
時価純資産法は、貸付金・有価証券・不動産・前払費用・棚卸資産・機械装置・営業権・金融負債など、個別項目ごとに詳細な時価評価を行うため、経営者が正確に企業の現状を把握でき、また買収者にとっても理想的なデューデリジェンスが実現します。
滞留している売上債権・棚卸資産の滞留在庫・退職給付債務・損害賠償など、簿外処理されている可能性がある債務も「無形資産」としてオンバランスする必要があります。また、上場している中小企業の場合は、企業結合後に会計処理でPPAの実施が必須となるため、M&Aでの株式価値に加えない「無形資産」も評価しておく必要があります。