ビルメンテナンス5/6:事例2:M&Aの実例
●M&Aの実例
【第2回】ビルメンテナンスのケース
多角経営失敗、本業回帰の為に会社分割
〜金融債務圧縮による会社存続に成功〜
複数社の譲受候補先とのトップ面談
A社のケースでは、銀行からの返済期限が目前に迫っていたため、M&Aを実施するにも時間がかなりタイトでした。弊社は迅速に登録企業から候補先を厳選し、譲受を希望した会社とトップ面談をセッティングし、複数社引き合わせましたが、特にB社が強く譲受を希望しました。
B社はビルメンテナンス・不動産会社です。B社長はビルメンテナンス事業の規模拡大を希望していました。A社とのトップ面談後、A社のビルメンテナンス事業の顧客地盤の強固さ、A社の顧客からの評判の良さ、老舗であることに魅力を感じ、ぜひとも話を進めたいとのことでした。
B社長にはA社グループのビルメンテナンス事業を新設分割により分割させて株式譲渡をする形、すなわちスポンサーとしての協力をしっかり取り付けました。B社からは、譲渡に際して、ビルメンテナンス事業の顧客が減少しないことが条件として提示されました。
そして、M&Aを実現するべく、専門家のチームを編成しました。筆者がプロジェクトリーダーとして、弁護士・会計士・金融機関交渉担当等、M&Aの特別チームを編成し、対応することになります。A社側も、財務・経理担当・譲受会社B社の窓口担当等、チームを編成し、社内で極秘にプロジェクトを進める体制を整えてくれました。
組織再編・会社分割 〜4社を2社へ、最終的には1社へ組織再編〜
A社は内装設備事業とビルメンテナンス事業の2事業で成り立っています。good事業であるビルメンテンス事業を事業譲渡するのが一番簡単ではありますが、事業譲渡は顧客との契約や従業員との労働契約、許認可などの承継が出来ないという欠点があります。特に、多数の顧客とのビルメンテナンス契約の再契約は、顧客流出や取引条件の再交渉のきっかけになりかねません。したがって、ビルメンテナンス事業を新設分割という手法で分社化し、その分社化された新会社をB社へ株式譲渡するという手法を採用することにしました。
新設分割は一定の条件を満たせば、債権者保護手続きが不要になりますし、各種契約の承継が可能になるだけでなく、同社が取得済みの許認可も承継可能(許認可の種類によっては承継不可の場合もあるので関係各所に要確認)です。
最終的に採用したスキームは、グループ会社4社のうち、母体である設計会社に建設会社と新設分割のビルメンテナンス事業を分割した会社である内装設備会社、持ち株会社を1社に統合して、分社化されたビルメンテナンス会社をB社へ株式譲渡するという形としました。
図3.事業譲渡と会社分割の違い
(第5回終/全6回)
中小企業のM&Aの実例2:ビルメンテナンスのケース(第1回)
中小企業のM&Aの実例2:ビルメンテナンスのケース(第2回)
中小企業のM&Aの実例2:ビルメンテナンスのケース(第3回)
中小企業のM&Aの実例2:ビルメンテナンスのケース(第4回)
中小企業のM&Aの実例2:ビルメンテナンスのケース(第6回)